重要な適応施策の推進に向けて、生態系、大気水環境、熱中症等の健康分野をはじめとする様々な分野・項目を対象として、気候変動による影響の検出・予測、適応策実施による影響低減効果の評価、及びそれらの知見に基づく適応策の策定・実施に必要な手法開発や政策研究等を行います。これらの研究により、政府による気候変動影響評価及び気候変動適応計画の改定や適応政策の推進、ならびに地方公共団体や民間事業者等による適応策の策定・実践に必要な科学的知見を提供するとともに、関連する研究分野の融合を図り、気候変動適応に関する研究拠点として国内外の適応の取り組みに貢献します。本研究プログラムの成果は、気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)やアジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)などを通じて公表していきます。
研究内容 | 2021 |
2022 |
2023 |
2024 |
2025 |
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PJ1 | 陸域~海洋の生物群集における気候変動影響検出・影響機構 | 過去データ解析,実験系の確立 | 影響メカニズム解析,解析手法の改良 | 成果取りまとめ・地図化 | ||
湖沼・流域・沿岸生態系における生態系機能・プロセスへの影響 | 手法検討 | 現地解析,統計解析 | 地域間比較,成果取りまとめ | |||
暑熱・大気汚染による健康リスクとイネへの影響の把握 | 手法検討,実験条件の検討 | 影響検出解析,実験的検証 | 成果取りまとめ | |||
PJ2 | 気候シナリオの高度化 | 公開 | 技術開発(次世代対応) | 作成 | ||
全国影響評価モデルの高度化 | 開発・拡張 | 解析・応用(2025影響評価報告書対応) | 次期モデル開発・拡張 | |||
全球影響評価モデルの高度化 | 解析・応用(ISIMIP3対応) | 次期モデル開発・拡張 | ||||
PJ3 | 気候変動影響・適応策の分野間及び国際的な影響解析 | 手法検討 | モデル開発 | 評価試行 | モデル改良 | 解析 |
自然生態系分野を考慮した適応策の実装に関する検討 | 概念整理 | 適応策抽出 | EbA検討 | 実装検討 | 解析 | |
地域における気候変動適応推進における課題の解析 | 情報収集 | KPI調査 | 参与型検討 | 計画の分析 | 解析 |
本研究プログラムは、以下の3つのプロジェクト(PJ)で構成されます。
気候変動が陸域・陸水・沿岸生態系、内湾環境、暑熱・健康等に及ぼしてきた影響を重点対象地域での観測データ等を用いて解明するとともに、適応策立案・推進に役立つ情報を提供します。具体的には、それぞれの対象について、過去から現在に至る状態変化に関する情報を収集するとともに、新たに実験的手法や統計学的解析による研究を進め、気候変動影響のメカニズムについての理解を深めます。同時に、気候変動影響をその他の人為的影響と区別する解析や、気候変動と人為影響の相互作用メカニズムの解明などを進め、気候変動影響を高い精度で検出するとともに、将来予測手法の改善や適応策の検討に資する知見を得ます。対象域は主に日本国内としていますが、マングローブ・サンゴ礁生態系、暑熱・健康問題等についてはアジア域も対象とします。
これらを通じて検出された気候変動影響に関する情報や、気候変動影響検出に有用なモニタリングデータはA-PLATやAP-PLATを通じて公表し、広域及び地域での適応策の立案や推進に貢献します。
サブPJ番号 | 課題名 | サブPJリーダー(所属領域) |
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PJ1-2a | 気候変動および大気汚染がアジアの水稲生産および健康へ及ぼす複合影響の解明 | 青野光子(生物) |
PJ1-2b | マングローブ生態系機能と気候変動―生態系機能評価と環境応答機構― | 井上智美(生物) |
PJ1-3a | 気候変動影響の検出を目的とした陸域生態系の観測・監視 | 竹内やよい(生物) |
PJ1-3b | 湖沼生態系における気候変動影響の観測と影響のプロセスの解明 | 角谷拓(生物) |
PJ1-3c | サンゴ・藻場群集における気候変動応答とメカニズムの解明 | 熊谷直喜(適応) |
PJ1-3d | 沿岸域・閉鎖性海域の浮遊・底生生態系への気候変動影響の評価 | 越川海(地域) |
PJ1-3e | 暑熱・健康及びエネルギー分野における気候変動に関する観測情報の分析研究 | 岡和孝(適応) |
PJ1-4 | 気候変動適応のための流域環境観測・監視手法の研究 | 西廣淳(生物) |
複数分野を対象として、全球、アジア・太平洋、日本における将来の気候変動影響評価手法の高度化を行い、最新の気候シナリオや社会経済シナリオを利用して気候変動影響評価を実施します。このとき、適応施策の有無による影響の違いも評価します。具体的には、全球やアジアといった広域スケールから地方公共団体スケールまでを対象に、気候変動シナリオを用いて様々な分野(例えば水資源、陸域生態系、作物生産性、人の健康)の将来の気候変動影響評価を実施します。このとき、 PJ1から提供されるモニタリングデータや影響のメカニズム等を参考にし、気温変化のみならず降水量変化、海面上昇、海洋酸性化などの様々な気候要因を考慮するとともに、社会経済の変化による影響も考慮した高度な影響評価に取り組みます。
これらを通じて、気候変動影響評価手法の高度化や優先地域等の特定などの適応策の検討に貢献するとともに、A-PLATやAP-PLATを活用して整備した気候シナリオや得られた影響評価結果を公表することにより、社会において気候変動リスクがよりよく理解されることに貢献します。
サブPJ番号 | 課題名 | サブPJリーダー(所属領域) |
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PJ2-0 | 影響評価研究に資するための気候・大気質・社会経済シナリオの開発と整備 | 石崎紀子(適応) |
PJ2-1 | 全球規模の分野別気候変動影響評価モデルの開発と応用 | 岡田将誌(適応) |
PJ2-2a | アジアの水稲生産および健康に及ぼす気候変動および大気汚染の複合影響の適応策評価 | 増冨裕司(適応) |
PJ2-2b | マングローブ生態系機能と気候変動―将来予測と適応ハザード評価― | 井上智美(生物) |
PJ2-2c | 草原域における気候変動による影響監視および適応評価 | 王勤学(地域) |
PJ2-3a | 陸域生態系における生物多様性・生態系機能・生態系サービスレベルの気候変動影響予測 | 小出大(適応) |
PJ2-3b | 湖沼環境における気候変動影響予測 | 高津文人(地域) |
PJ2-3c | 気候変動に伴うサンゴ・藻場群集の分布変化予測の高度化 | 熊谷直喜(適応) |
PJ2-3d | 沿岸域・閉鎖性海域の水環境・生態系を対象とした気候変動影響予測と適応策 | 東博紀(地域) |
PJ2-3e | 暑熱・健康およびエネルギー分野における気候変動影響評価 | 岡和孝(適応) |
PJ2-3f | 生物種の気候変動に伴う分布変化予測及び影響評価手法の高度化 | 石濱史子(生物 |
PJ2-4 | 流域生態系管理による気候変動適応効果の評価 | 林誠二(福島) |
PJ1やPJ2と連携し、気候変動影響予測、適応計画、適応策実践との間に存在するギャップや阻害条件等を明らかにするとともに、それを改善するためのモデルや手法を開発します。具体的には、複数の分野についての気候変動影響予測を同一の気候シナリオを選択して横断的に実行可能なモデルを開発し、「どの適応策をいつまでに始める必要があるか」という問いに答えうる適応経路解析手法を開発します。このとき、所外の関連研究プロジェクトとも緊密に連携し、影響・適応情報の充実を目指します。また適応に関連する法制度等や施策間の相互作用(シナジー・トレードオフ、資源の競合など)、適応計画と実践のギャップ等を解析し、効果的な適応策実施への阻害要因を明らかにします。さらに安全保障・経済(貿易等)面の分析など国内外の気候変動影響が日本に与える影響についても検討します。
これらを通じて、科学的知見をより効果的に活用した適応戦略立案に貢献するとともに、得られた科学的知見やシステムをA-PLAT及びAP-PLATを活用して公表することにより、国内外の国・地方レベルの適応計画や適応策の策定、及びその効果的な実践を促進します。
サブPJ番号 | 課題名 | サブPJリーダー(所属領域) |
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PJ3-1 | 気候変動影響および適応策の分野間及び国際的な影響の解析 | 真砂佳史(適応) |
PJ3-2 | 自然生態系分野を考慮した気候変動適応策の実装に関する研究 | 山野博哉(生物) |
PJ3-3 | 地域における気候変動適応推進における課題の解析 | 藤田知弘(適応) |